9月号 退職金制度の選択肢

中小規模の会社にとって、退職金制度は人材採用、人材確保の施策として是非取り入れてほしい制度です。しかし、数十年にわたって制度を維持しなければならない性質上、導入には他の制度よりも綿密な検討が必要です。

退職金が払えない

A社の例です。社員は50名ほどいましたが、ここ数年は仕事量が減り、涙をのんで10名を整理解雇しました。困ったのは退職金です。退職金規程により3,500万円強が必要になりました。資金難で目途が立ちません。会社を辞めていく者に分割給付をお願いしても受け入れてくれるか分かりません。整理解雇をしたばかりに会社は倒産の恐れが、社長さんは頭を抱えています。

準備金積立方法の選択肢

A社では退職金を社内準備金で賄っていましたが、資金繰りが悪くなったので、これを流用してしまいました。A社のように社内準備金で退職金を準備している会社も多くあります。退職金制度運用の自由度が高いメリットはありますが、①損金扱いされない、②社員の受給権が保護されない、の理由でお勧めできません。

社外積立では、中小企業退職金共済(中退共)や商工会議所が扱う特定退職金共済(得退共)、日本版401kプラン、金融機関が販売する各種企業年金に退職準備金を積み立てることができます。

また、退職金積み立て用に販売されている訳ではありませんが、養老年金やがん保険を退職金積み立てに利用している会社もあります。掛け金の一部または全部が損金扱いでき、退職金支払い時に返戻り金を充てます。退職金の全額をこれで賄うと言うよりも、補完目的で使います。

中退共や特退共では、自己都合、懲戒解雇に対して給付制限、給付額調整ができません。労務管理の一環として退職金制度の導入を考えているところでは、積立て方式の検討項目に給付制限可能性を加えます。

退職金規程の選択肢

退職金規程で検討する項目には、給付方法と、給付額計算方法があります。

給付方法には、一時金、年金、一時金と年金併用の選択肢があります。一方、給付額計算方法には、確定給付方式と確定拠出方式があります。上述のA社では、退職時の基本給と勤続年数から給付額を計算する方式でしたので、確定給付方式といえます。確定給付方式にはその他に、定額制、ポイント制などがあります。いずれにしても、退職金規程で規定された計算方法で給付額が決定され、その額が会社の給付義務となるものです。

それに対して、確定拠出方式は、退職金規程に毎月、毎年の積立先への支払額だけを規定しておきます。積立先が中退共であれば、そのお金を中退共が運用し、運用成績によって退職金額が決まる方式です。積立先に支払った段階で会社の義務は完結されることになります。

どの選択肢を用いるかは、会社の退職金制度導入の目的に基づいて検討することになります。冒頭にも述べましたが、退職金制度は息の長い制度です。慎重な制度設計が求められます。

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