Q: 建設機械の保守・点検をしている人員を、業務縮小のために運搬機械部門に異動させようとしたところ、拒否されました。「それでは仕事がないから」と異動を促すと、「仕事を持ってくるのは会社の責任だから」と休業手当の支払いを請求されました。休業手当は必要でしょうか。
A: 通常は、休業手当の支払いは必要ありません。
我が国の雇用習慣では、入社してからその者の適性や人員配置の都合により、職場や仕事を決めることが多く行われています。つまり、職務を特に限定しない包括的な雇用契約が結ばれていることが一般的で、この場合には会社は原則として自由に異動を命じることができます。また、多くの会社では就業規則に、「業務に必要なときは、異動を命じることがある。社員は正当な理由がないときは、これを拒否することはできない」旨の規定があります。就業規則は雇用条件ですので、通常は異動を拒否することは業務命令違反となります。当然に、休業手当の支払いは必要ありません。
しかしながら、全ての異動命令が許されるわけではありません。次のような異動命令は人事権の乱用として無効になることがあります。
① 職務を限定して採用・雇用しているとき
② 業務上の必要でなく、退職誘導や、いじめ等の他の目的があるとき
③ 給与その他の条件が著しく低下するとき
④ その者の技能、能力と著しく釣り合わないとき
無効となれば、その異動命令は元々なかったことになりますので、その間の休業を強いられていたとして、異動命令後の期間に対して休業手当の支払い義務が生じることになります。
ご相談の内容では、業務縮小という経営上の必要性があり、異動により解雇を避けた意図が見えます。従って、仕事がないために本人が休業していても、休業手当の支払いの必要性は薄いでしょう。