8月号 軽い気持ちの犯罪行為

会社のため社員のためと思っての軽い気持ちが、不正行為、犯罪行為となることがあります。今回は、そんなケースを3例紹介します。

扶養の範囲で

小さな食品販売店です。パートタイマーを多く使っているので、年末になると勤務希望者が減ります。「今月は7日しか入れないで下さい」、「わたしは10日」との希望が重なって、店主はシフト作成に頭を抱えました。年末はそうでなくとも忙しい季節です。店を開けるための人数をどうしても確保できませんでした。

そこで、店主はこのように提案しました。「皆さん、12月の出勤日をもう少し多くして下さい。その代り、扶養の範囲を超えないように、給料分は私のポケットマネーから補填します。店からのお金ではありませんから給料明細書にも源泉徴収票にもその分は載せません。扶養から外れる様な迷惑は絶対に掛けません。」店主は、店も社員も両方が得するこのアイデアに満足でした。

★ このアイデアは当然ながら違法です。さらに、労働保険料を減額する不正に繋がります。

会社都合の退職に

営業職で入社したAさんでしたが、成績が芳しくありません。困った社長は、Aさんに対して当分の間は営業ではなく営業支援の仕事に替わって勤務することを打診しました。給料は営業手当と歩合分が減ることになります。すると、Aさんは「それならば辞めさせて頂きます」と退職を申し出ました。その上で、「退職は会社都合として欲しい」と要望しました。社長としては、解雇した訳でも、辞めて欲しいと言った訳でもないのに「会社都合はおかしい」と思いました。が、失業保険給付が早く貰える「会社都合」の方が本人のためになると、これを了承しました。

★ 会社都合でないのに、「会社都合」と離職票に虚偽の記載をすることは許されません。退職者が不正に失業給付を受けたときは、本人はもとより、会社も返還請求、あるいは返還額の2倍の額の納付を命じられます。更に詐欺罪に問われる恐れがあります。

私傷病を労災に

長年勤務しているBさんが、帰宅途中にいつものように会社近くのスーパーに寄りました。この帰りがけ、段差に足を取られて転倒、膝を強打してしまいました。Bさんは、社長に電話をして事情を話し、転倒したのは会社の構内にして貰いたいと要望しました。社長は困ったと思いながらも、Bさんの要望を断り切れず、これを承諾しました。療養補償給付、休業補償給付の申請書に事業主の確認印を押し、Bさんに便宜を図りました。

★ 労災でもないのに、労災給付を受給できるよう証明することは当然に違反行為です。受給した分の労災給付をBさんと連帯して返還することを命じられることがあります。更に詐欺罪に問われる恐れがあります。

コンプライアンス

事業を行う上で、種々の法規制があります。これらの法規制は事業活動をするためのルールです。ルールを無視することは許されません。些細なことと思えてもルールを無視することは、会社の内部に対しても、外部に対しても弱みを作ることになります。決して得策ではありません。法順守=コンプライアンスが求められるところです。

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