1月号 無期転換制度

2017年1月(第92号)

改正労働契約法第18条に規定されている無期転換制度による無期転換申し込み権が発生するまで残り少なくなってきました。今回は、無期転換制度の概要と、それまでに準備すべき項目等をまとめてみます。

無期転換制度の概要

平成24年の改正労働契約法に無期転換制度が規定されました。施行は平成25年4月1日です。有期雇用契約を反復更新して通算期間が5年を超えた社員からの申し込みがあれば、会社は期限の定めのない雇用契約に転換しなければならないという制度です。通算期間のカウントは施行日の平成25年4月1日以降に開始した有期契約が対象となります。無期雇用契約に転換される時期は、申し込みのあった契約期間が終了した翌日です。

無期契約社員と正社員

無期契約社員=正社員、有期契約社員=パート社員との認識している方がいますが、間違いです。労働基準法で正社員の定義はあませんが、概ね①無期契約社員、②労働時間が最も長い、③賞与や退職金制度があれば適用される、の要件を満たしてしていることになります。昔は大多数が正社員でしたので、敢えて定義がなかったようです。
ということで、無期契約社員への転換の義務は、正社員への転換義務ではありません。今まで、パート社員であった方は、無期のパート社員に転換することで法の要請はクリアされます。もし、その方が時給であれば、時給制のままでよく月給制にすることまでは規定されていません。

無期転換の例外

通算期間が5年を超えた社員の全てが無期転換申し込み権を持つと、不都合が起きます。例えば、定年後に再雇用した雇用継続社員です。60歳定年の後、65歳までの雇用であれば無期転換申し込み権は発生しませんが、65歳を超えて契約すると、申し込みにより無期雇用契約に転換しなければなりません。既に定年は過ぎていますので、本人が希望すれば何歳になっても退職しないことになります。退職させるには解雇しかありませんが、解雇は中々難しいのが現実です。
このため、「有期雇用特別措置法」なる法律が作られました。この特別措置法では、①定年後の雇用継続社員、②専門的知識等を有する有期雇用労働者を対象としています。無期転換制度の特例の適用を希望する会社は、特例の対象労働者の能力が有効に発揮されるように雇用管理に関する計画書を作成し、労働局長の認定を受けることで、無期転換申し込み権を止めることができます。

準備すべきこと

「有期雇用特別措置法」の適用を希望するときは、あらかじめ認定の手続きが必要です。
有期のパート社員を雇用している会社では、無期雇用転換前に、無期雇用転換後の処遇を規定しておく必要があります。今まで、正社員以外に無期雇用社員がいないときは、転換後の社員に対する就業規則の整備が必要となるでしょう。
無期転換の際に、他の条件はそのままで単に無期雇用社員に転換するだけでなく、正社員や多様な正社員(短時間正社員や勤務地限定正社員等)への転換を図るならば、キャリアアップ助成金受給の可能性があります。
無期転換制度に対する検討をしっかりすることにより、この制度を、会社発展の機会として利用したいものです。

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