2025年 5月(第192号)
今月の事務所通信では、「スポットワーク」を取り上げました。近年進捗の著しい、いわゆるスキマバイト=スポットワークの増加の背景、導入時の配慮事項を紹介しました。先月も書きましたが、建築業や医療・介護以外でも多くの業種で人材の確保がますます難しくなってきました。一方で、物価の上昇で生活苦を感じる人たちがスポットワーカーとしてスキマ時間を利用して収入を得る仕組みが提供されるようになり、両者の思惑が一致して急激に増加しているようです。
新しい雇用形態なので法の整備がなく問題を孕んでいます。人手不足に直面している会社では、潜在的なデメリットを把握した上でならば導入を検討する価値はあると思われます。
テレビでスキマバイトのコマーシャルが連日数多く流されています。今回はスキマバイト=スポットワークの背景および導入時の配慮事項を紹介します。
スポットワークの背景
2018年にスタートアップ企業のタイミーがスポットワークの仲介サービスを開始し、スマートフォンアプリを活用した「即日働けて即日報酬」の仕組みを提供しました。2020年代前半には、新型コロナ禍明けの人手不足や副業希望者の増加を背景に市場は急成長し、IT大手や人材サービス大手も次々と参入しました。2024年5月末時点で登録者数は約2,200万人と、わずか1年で2倍以上に増加し新規求人も増え続けております。特に人手不足が深刻なコンビニ、物流、運送などでの需要が高まっています。
スポットワークの種類
スキマバイトは、基本的に雇用契約に基づくアルバイトです。数時間~1日単位での勤務が中心で、働いた日ごとに契約が終了し、継続的な雇用関係はありません。
これに対してスポットワークはスキマバイトを含むより広い概念です。アルバイトだけでなく業務委託契約も含み、形態が多様です。Uber Eatsや出前館などのデリバリーサービス、クラウドワークスやランサーズなどのクラウドソーシングサービスもスポットワークの一種で業務委託契約の仕事を仲介しています。
スポットワーク導入時の配慮事項
新しい働き方であり、法的整備が追いついていないために、いくつかの問題点が指摘されています。会社がスポットワークを導入する際には、次の事項に配慮することが求められます。
- 労働基準法に基づいた労働条件の書面による明示、時間外労働等が発生した場合の割増賃金の支払い、労働安全衛生法に基づく安全衛生教育の実施、また労災保険料の納付、個人情報の適切な管理を行います。
- スポットワークの内容や責任に見合った公正な賃金設定、通常のアルバイトやパートタイム労働者とのバランスも考慮することが望まれます。短時間であっても、業務遂行状況を適切に評価しフィードバックを行うことでモチベーションの維持や業務改善につなげます。
- スムーズに業務に取り組めるよう、具体的な業務内容や手順を明確に指示します。必要な情報や社内ルールを共有することで無用な混乱を防ぎます。スポットワーカーからの質問や相談に対応できる担当者を配置し、円滑なコミュニケーションを図ることも重要です。
- その他、スポットワークを導入する目的を事前に明確にし、全社的に共有することがスムーズな導入と運用に繋がります。既存の社員に対しては、スポットワーカーの受け入れについて説明し、協力を求めることも得策です。
まとめ
スポットワークは、人材不足の解消や業務の効率化に繋がる有効な手段となりえますが、問題も孕んでいます。今回は雇用契約のあるスキマバイト導入時の配慮事項を中心に紹介しましたが、スポットワーカーと会社の双方にとってメリットのある形での導入・運用が望まれます。