2月号 70歳までの就業確保

2021年2月(第141号)

高年齢者雇用安定法が改正され70歳までの就業確保が会社の努力義務となりました。今回は、70歳までの就業確保措置について紹介します。

改正の背景

少子高齢化が急速に進行する中で、社会や個人に不都合が顕著になってきました。①会社:15~64歳の生産年齢人口の減少による人材不足、②国:社会保障費の増大、③個人:老後の長期化による資金不足。改正前の高年齢者雇用安定法は65歳までの就業義務を会社に課していました。上の不都合を緩和することを目的に70歳までの就業確保を会社の努力義務とする改正が行われ、この4月1日から施行されます。

就業確保の内容

改正前の高年齢者雇用安定法では、①65歳までの定年引き上げ、②定年廃止、③子会社・関連会社等を含めた65歳までの継続雇用制度の導入のいずれかの措置を義務として課していました。これらは全て雇用関係を維持した上での就業の確保でした。改正後では、70歳までの者に対して上のいずれかの措置と創業支援等措置も選択肢に加えられました。また、③の継続雇用制度では解雇や退職事由以外の基準を定めることができること、継続雇用する会社は自社・子会社・関連会社以外の別会社でも可となりました。別会社のケースでは、自社とその会社間で、70歳まで継続雇用する契約を結ぶことが必要になります。

創業支援等措置とは

改正により加えられた創業支援等措置とは雇用に依らない就業確保の方法です。希望する高齢者が新会社を創業して新たな事業をはじめたとき、その会社と業務委託契約を締結することで70歳までの就業を確保するものです。新会社の業務委託契約先は自社だけに限りません。次の選択肢が提示されています。
イ 当該事業主が実施する社会貢献事業
ロ 法人その他の団体が当該事業主から委託を受けて実施する社会貢献事業
ハ 法人その他の団体が実施する社会貢献事業であって、当該事業主が当該社会貢献事業の円滑な実施に必要な資金の提供その他の援助を行っているもの
ここでの社会貢献事業とは、「社会貢献活動その他不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与することを目的とする事業」とだけ示され具体的な事業内容に言及されていません。ただし、「社会貢献事業」に該当しない例として、
・特定の宗教の教義を広め、儀式行事を行い、信者を教化育成することを目的とする事業
・特定の公職の候補者や公職にある者、政党を推薦・支持・反対することを目的とする事業
が挙げられています。
自社が業務委託契約を締結しないケースでは、自社とその会社間で、70歳までの就業する機会を提供する契約を結ぶことが必要です。

まとめ

70歳までの就業確保措置は当面は努力義務ですから罰則はありません。とは言え罰則がないからと言って何の制度も整備しないことは得策ではありません。一つは、ベテランの社員を失うリスクです。もう一つは、就業確保措置を取らなかったために退職社員が損害賠償を求めてくるリスクです。いずれのリスクも顕在化する前に予防しておくことが肝要です。

社会保険労務士丸山事務所は、「会社の発展とそこで働く社員の幸福の実現」を全力で応援します。

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