2015年 1月(第68号)
来年、平成28年1月1日からマイナンバーの利用が開始されます。会社に対しては、取扱上の義務が課せられています。今回は、マイナンバー制度の概要および留意点について紹介します。
マイナンバー制度の概要
平成25年5月に「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(いわゆるマイナンバー法)」が成立・公布され、平成28年1月から番号の利用が開始されることになりました。マイナンバーは、年金、労働、医療、福祉等の社会保障、税金および災害対策分野で使われます。
マイナンバーでは、従前の健康保険、年金、雇用保険、税金等を取り扱う機関ごとに管理している個人の情報はそのままに、これらの情報を紐付けるために個人ごとに番号を付与します。番号は、住民登録をしている全員に付与され、原則として一生同じ番号を使うことになります。
マイナンバー制度のメリット
行政が、他の機関で管理している情報を参照する場面が多々あります。例えば、一人の親を兄弟2人が扶養控除の対象としているときに、2人の管轄する税務所が違っていると従来は名寄せ・突合が困難なために、不正還付等の防止・是正に多大な事務を必要としてきました。これが簡単にできるために、税徴収の不公正が是正できることが行政側のメリットとしています。
我々国民にとってのメリットもうたわれています。例えば老齢厚生年金の加給年金申請では、条件を満たしていることを確認するために住民票や所得証明書等が必要になります。従前は申請者が市役所に出向いて交付を受け、これらを添付する必要がありました。マイナンバーを用いると、行政がこれらの情報を照会することが出来るために、書類の添付を省略できます。このように手続き場面で、添付書類の削減により行政手続が簡素化されるために、国民の負担が軽減されるメリットがあるとしています。
取扱上の留意点
マイナンバーは今年の10月から個人宛に通知されます。そして、平成28年1月1日からは源泉徴収票や、健康保険、厚生年金、雇用保険の被保険者資格取得届等の作成時に、通知された社員のマイナンバーを記載しなければなりません。このため、社員からマイナンバーを取得する必要があります。
マイナンバーを用いたなり済まし等の不正を防止するために、事業者にはマイナンバーの取り扱いについて、①安全管理義務、②目的以外への使用禁止、③取り扱う社員に対する監督義務が課せられています。情報を流出させたときには罰則規定が設けられています。また、社員からマイナンバーを取得するときには、用途を明示して提供を受けなければなりません。
上の3つの課せられた義務に見るように、事業者は各種の書類にマイナンバーを単に追加記載するだけで済むとはなりません。マイナンバーの管理と運用方法に関して、事業者用のガイドラインが示されていますので、事前に十分な検討と配慮が要請されています。