1月号 労働法を用いた詐欺まがい行為

労働基準法をはじめとする労働法を用いて詐欺まがいの行為をする者がいます。今回は、そんな例を紹介します。

採用条件

を下げて入社

A社へハローワークで紹介されたとしてBが応募してきました。Bは実直そうでしたし、A社の提示した時給800円に対して、「自分は覚えが遅いので750円でお願いします」と、逆に賃下げを申し出て社長を驚かせました。仕事は、製品を箱に詰め、テープでふたを止めるだけの簡単なものです。ところが、なにしろ覚えが悪い、しかも仕事が遅い。しかし、真面目そうに取り組んでいるものですから、「慣れればもう少し早くなるだろう」と、多少アドバイスするくらいで見守ることにしました。一週間が過ぎました。変わりません。社長も少し心配になりました。「私は覚えが少し遅いので」と言って自らの時給を下げたことを思い出し、もうしばらく辛抱することにしました。

2週間後に態度急変

2週間が過ぎました。すると、Bの態度が急に変わりました。連絡なしに遅刻したり、禁煙場所でたばこを吸ったりします。手が滑ったと言って製品を机から落として壊してしまいます。それも一度や2度ではありません。社長がちょっと注意をしたら、プイッと横を向いてそのまま帰ってします。それが何日も繰り返されたので、さすがの社長も我慢しきれなくなって、「クビだ!もう明日から来なくていい」と一喝しました。Bはその日も横を向いて帰っていきました。

解雇予告手当の請求

翌日、Bは神妙な顔をして来社し、昨日のことを詫び、「解雇は分かりました。ハローワークに届けるため」と退職証明書の交付を依頼してきました。社長は、○○月○○日に解雇した旨を書いて帰しました。すると、Bは直ぐに電話を掛けて来て、「昨日の解雇は即日解雇だから、解雇予告手当として30日分給料を7日以内に支払うように」と一方的に喋って電話を切りました。もともとBが悪いのに何を言ってきたのだ、馬鹿馬鹿しいと放っておくと、労働基準監督署から「お尋ねしたいことがありますので、下記により出頭されるよう労働基準法第104条の2により通知します」ではじまる出頭要求書が届きました。

監督官による事実確認

A社長は監督官からBを解雇した事実関係を聴かれました。Bは試用期間中であったこと、勤務態度がひど過ぎたこと等を詳しく話しました。監督官は退職証明書のコピーを提示して、「これを社長さんはBに渡しましたか」と聞きました。労働基準法第20条では、解雇するときは少なくとも30日前に予告することが必要なこと、もし予告を行わないときは平均賃金の30日分以上の解雇予告手当の支払いが規定されていること、試用期間中の者を解雇するときは例外的に解雇予告や解雇予告手当は必要ないとしているものの、14日を超えての解雇では例外規定が適用されないことを説明し、解雇予告手当の支払いを行政指導しました。

噂では常習者

Bには噂があります。Bは他の会社でも最初の2週間は神妙に働き、それが過ぎるとグレ始め、解雇されては解雇予告手当をせしめることを常習としているという噂です。A社長には気の毒でしたが、労働基準法の知識がもう少しあれば、との思いは残ります。また手前味噌になりますが、労働法に明るい社会保険労務士がA社長の傍にいて相談に乗ることができていればと悔やまれてなりません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

社会保険労務士丸山事務所は、「会社の発展とそこで働く社員の幸福の実現」を全力で応援します。

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。