7月号 労使協定

2020年7月(第134号)

会社と社員間で種々の契約の形態があります。雇用契約、労働協約そして労使協定です。今回は、その中で労使協定を取り上げます。

労使協定とは 

会社と社員個人と締結される契約が雇用契約、労働組合と締結されるのが労働協約です。労使協定は会社と社員の過半数以上の代表者とが締結する書面での契約です。契約ですから多くの場面で活用してもよいはずですが、実際には自主的に活用されている例は左程多くありません。労働基準法や育児介護休業法で規定されている場面で使われることが多いのが実態です。
 労使協定の効果 
労使協定は会社と社員との契約ですので、その内容に対して会社も社員も権利と義務を生じることになります。ところが、実際には自主的な労使協定は多くありませんので、権利と義務よりも法律からの免罰効果を期待して締結されることが殆どです。免罰効果とは、法が原則的に禁止している行為を免除される効果です。

労働基準法の規定する労使協定 

労働基準法は1日8時間を超える労働や法定休日に労働をさせる行為を禁止しています。しかし法の一律の規制では業種や業態によっては事業が回せなくなることがあります。そこで、36協定その他の労使協定の締結により、8時間を超えて労働させたり、法定休日に労働をさせたりすることが可能となります。もちろん、会社と社員がどのような内容の労使協定を締結しても可能という訳ではありません。「法律の許す範囲で」との制限が付いています。
1日8時間を超える、あるいは法定休日に労働させることができる労使協定は、①時間外労働・休日労働に関する労使協定、いわゆる36協定、②変形労働時間に関する労使協定、③裁量労働制に関する労使協定等があります。さらに労働時間に関しては「フレックスタイム制の労使協定」があります。年次有給休暇は社員の請求時季に与えるのが原則ですが、「年次有給休暇の計画的付与に関する労使協定」により制限付きながらも会社は年次有給休暇の時季を指定することができます。賃金の全額払いの原則も労使協定により法定控除以外の金額を控除することができます。

その他の労使協定 

育児介護休業法には、「育児休業や介護休業が取得できない者の範囲に関する労使協定」や「看護休暇適用除外者に関する労使協定」があります。労使協定を締結していないと、例えば入社間もない社員でも育児や介護の休業を請求すると会社はそれを拒否することができません。
一風変わった労使協定としては「休業協定」があります。休業自体は労使協定がなくても行えますが、雇用調整助成金の受給申請をするためにはこの休業協定が必要になります。

まとめ 

従来は主として免罰効果のためだけに締結されている労使協定ですが、効果は免罰だけではありません。労働組合のない会社では労働協約に代わるものとして自主的に労働条件を話し合い、それを労使協定に落とし込むことができます。このような労使協定の活用により会社と社員の信頼感の醸成や社員の帰属意識の向上が期待できます。

社会保険労務士丸山事務所は、「会社の発展とそこで働く社員の幸福の実現」を全力で応援します。

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