2024年 5月(第180号)
社員の利便性や年次有給休暇の取得促進のために半日・時間単位の年次有給休暇制度を導入する会社があります。今回はこれらと通常の一日単位との共通点、相違点を整理してみます。
年次有給休暇の原則
休暇日とは原則として午前0時から午後24時までの丸一日労働義務から完全に解放される日を言います。年次有給休暇は休暇ですから、原則通りに丸一日単位で付与・取得されてきました。ところが、半日単位の年次有給休暇に対して「労働者が希望し、使用者が同意すれば、日単位での取得を阻害しない範囲で与えることは差し支えありません」との行政解釈がなされ、法律の規定がないままに半日単位の年次有給休暇が多くに会社に導入されました。さらに、平成20年の改正・労働基準法により時間単位の年次有給休暇制度が導入されました。
半日や時間単位の年次有給休暇は例外的な取り扱いである点は考慮すべき事柄です。
取得日数
半日単位は法の規定がありませんので、会社が認めれば取得日数に制限が設けられていません。
一方の時間単位には理由は定かではありませんが、年に5日分以内との制限があります。例え労働者が希望しても、前年からの繰り越し分を含めて5日分を超える時間単位の年次有給休暇を認めることは違法になります。
計画的付与
年に5日を超える年次有給休暇に限り計画的付与を行うことができますが、計画的付与に半日・時間単位を含めることはできません。半日・時間単位の取得はあくまで「労働者が希望し」となっているためです。会社の都合で計画的に取得させることは許されていません。
時季変更権
事業の正常な運営を妨げるときに年次有給休暇の取得を制限できる権利が時季変更権ですが、半日・時間単位のどちらにも適用できます。
年5日の取得義務
正確には、年次有給休暇の「年5日間を取得させる義務」です。改正・労働基準法による平成31年4月からのルールです。対象は、年に10日間以上の年次有給休暇が付与される社員です。この年5日間から、すでに社員が取得した日数は控除されます。もし3日間の年次有給休暇が取得されていれば、会社の義務は2日間になります。
ただし、控除できるのは一日単位と半日単位だけです。時間単位の年次有給休暇は何日分取得していても控除できませんので注意が必要です。
所定労働時間の変更
期の途中で正社員からパート社員への転換のように所定労働時間が変更になったとき、一日単位や半日単位ではあまり問題になりませんが、時間単位のときは少し厄介で次のようにします。
日単位で残っている部分の時間数は変更後の所定労働時間に合わせます。時間単位で残っている部分は所定労働時間の変動に比例して時間数を計算し、1時間未満の端数は切り上げます。
まとめ
半日・時間単位の年次有給休暇は利便性を向上させ仕事と生活の調和を図る観点から、社員からは歓迎されます。反面、管理の煩雑さや業務への支障の可能性も伴います。導入は事業や規模に合わせて無理をしない範囲で検討すべきでしょう。