Q: 終業後、会社から迂回して保育園に子供を迎えに行く途中で自転車が横転して怪我をしました。通勤災害になるでしょうか。
A: 通勤災害として扱われます。
通勤災害として認められる要件の一つに、「合理的な経路」があります。通勤のために通常利用する経路であれば、複数あったとしてもそれらの経路はいずれも合理的な経路となります。最短距離であることは求められていません。
「合理的な経路」から逸れたときは逸脱行為となり、それ以降で怪我をすると通勤災害として認められないのが原則です。ただし日常生活上必要な行為で次の示すことを最小限度の範囲で行う場合には、逸脱又は中断の間を除き、合理的な経路に復した後は再び通勤となる例外が設けられています。
- 日用品の購入その他これに準ずる行為
- 学校での教育その他、職業能力の開発向上に資するものを受ける行為
- 選挙権の行使その他これに準ずる行為
- 病院での診察・治療を受けることその他これに準ずる行為
- 配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹等の継続的な介護
保育園に子供を迎えに行く行為は例外行為になっていません。仮に①の「日用品の購入その他これに準ずる行為」と拡大解釈したとしても、保育園へ向かう経路上の怪我は逸脱の間の怪我となり通勤災害となりません。
厚生労働省は、「子ども・子育て支援法等の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備に関する省令」の制定に伴う労働者災害補償保険法施行規則の一部改正について(平成27年3月31日 基発0331第21号)の通達で「合理的な経路」を次のように解釈しています。
「他に子供を監護する者がいない共稼労働者が託児所、親せき等にあずけるためにとる経路などは、そのような立場にある労働者であれば、当然、就業のためにとらざるを得ない経路であるので、合理的な経路となるものと認められる。」
この通達に基づいて労働基準監督署は通勤災害の認定を行います。「他に子供を監護する者がいない」等の要件が整っていれば、例え保育園への経路が大きく迂回していても「合理的な経路」と判断されます。
この解釈は子供を保育園に送り迎えしている社員にとって助かります。愚痴になりますが、この通達を見付けるのに苦労しました。必要なことは通達で済ませないで法律をもっと分かり易い形に改正して頂きたいと強く思った次第です。
(2024年 9月)