最終給与の現金手渡し

Q: 退職時に、会社からの貸与品を返還しない社員がいて困っています。通常の給与は、銀行振り込みですが、最終給与を貸与品と交換で現金手渡しとすることは可能でしょうか。

A: 最終の給与を現金手渡しとすることは可能ですが、貸与品との交換を条件とすることはできません。

現在、銀行振り込みによる給与支払いが大勢を占めていますが、労働基準法の原則は現金支払いです。銀行支払いは、むしろ例外的な方法です。そこで、原則に戻って現金支払いとすることは、労働基準法上の問題とはなりません。とは言っても、銀行支払いを条件に雇用契約を結んでいる社員に対して、最終給与だけとは言え一方的に支払い方法を変更することは許されていません。

①社員全員の合意をとる、②就業規則を正規の手続きに則って変更する、の何れかの方法を採ることになります。②の正規の手続きとは、労働契約法第10条に規定されている方法で、この変更が、①変更の必要性、②社員の被る不利益、③内容の相当性、④社員への説明の状況等を勘案して合理的であり、かつ変更後の就業規則が社員に周知されていることを必要としています。この様な手続きを経て変更された就業規則は、変更に反対している社員に対しても適用されます。

「貸与品との交換を条件とすることはできない」ことは、給与支払い5原則の一つ、「一定期日支払い」の原則が、貸与品の返還の有無に拘わらず会社に課せられているためです。もし、本人が給与支払い日以降に受け取りに来社したときは、貸与品の返還がないことを理由に支払いを拒否することは労働基準法違反に問われます。

ルールが変更されたとはいえ、最終給与の受け取りために来社を要求することは社員に大きな負担です。ここは、最終給与を一律に現金支払いとしないで、変更の目的である貸与品の返還が期日までになされない社員だけに適用し、給与以外の清算が終了している社員に対しては、従来通り銀行振り込みとする等の配慮もあってよいでしょう。

社会保険労務士丸山事務所は、「会社の発展とそこで働く社員の幸福の実現」を全力で応援します。

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