9月号 労務管理とプライバシー

2019年9月(第124号)

労務管理に必要なデータの収集が、社員のプライバシーを侵害することがあります。従来からの問題に加えて、昨今の情報技術の安易な利用がトラブル発生に拍車を掛けています。
今回は、社員データの収集とプライバシー侵害の問題について、いくつかの事例を紹介します。

所持品検査 

社員が会社の製品や備品、原材料を持ち帰ることがあります。会社はこれを防止するため、就業規則に、「会社は随時社員の所持品検査をすることができる。社員はこれを拒めません」旨を規定し、必要に応じてロッカーやカバンの中を検査します。ところが、その中身は他人に知られたくないのでトラブルに発展することがあります。
やむを得ず所持品検査をするためには、①合理的な理由、②適切な方法、③特定の者だけを対象としない、④就業規則等への目的明示が必要です。さらに何よりも大事なのは、社員が検査の必要性を納得するための丁寧な説明です。

監視カメラ 

職場に監視カメラを設置する会社は少なからずあります。目的は概ね次のようです。①盗難、情報漏洩等の防犯、②パワハラ等の不正行為の監視、③サボりの監視、④在席、電話中、商談中等の勤務状態の確認、⑤不安全行為・行動の発見、⑥習熟度の確認、⑦品質保証の一環、⑧介護施設や保育園等の人を預かっているところでは、介護や保育状況の確認や家族への配信。
便利である一方で、プライバシーの侵害に繋がる恐れがあります。特に録画機能があるときは、より一層の慎重さが求められます。録画を再生する事由、再生を視聴できる者の限定、再生時の記録等を規定し、運用することが必要です。

メールチェック 

インターネットに繋がったパソコンを自由に使える環境では、就業時間中に業務と関係ない私的メールを盛んに交信する社員も現れます。これは、業務効率の低下、秘密情報の漏洩、会社評判の棄損に繋がります。そこでメールをチェックし、指導や懲戒処分の対象とすることが行われます。
ところが、勤務時間中の私的メールといえども、プライバシーが絡んできます。無条件でチェックできるとは限りません。やむを得ずメールチェックをするときには、所持品検査と同様の配慮が必要になります。

GPS位置情報の活用 

営業職のように社外で勤務する時間の多い社員にGPS機器やスマトフォンを貸与して、リアルタイムの位置情報を知ることができます。さらに、社員の1日中の移動場所、滞在時間も記録できますので、社外であっても労務管理が簡単にでき、業務の効率化を図ることができます。ところが、社員からすると社外にあっても監視状態にあるための圧迫感を覚えるようになります。
GPS機器を導入するにあたっては、特に記録機能があるときは、監視カメラの導入時と同様の配慮が必要となります。

まとめ 

監視カメラにしても、GPSの位置情報の活用にしても、業務の効率化を図るための道具です。徒に心理的圧迫を加えたり、マイナスのイメージを抱かせたりしては逆効果になります。

社会保険労務士丸山事務所は、「会社の発展とそこで働く社員の幸福の実現」を全力で応援します。

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