2013年7月(第50号)
有期雇用契約は需給調整機能に優れている等の理由でよく使われていますが、法的には、民法と民法の特別法である労働基準法および労働契約法が関わっています。誤解も多いところなので、簡単に整理してみます。
民法の規定
民法では、有期雇用期間中の解雇や自己都合退職等による解約は出来ないことを前提としています。第628条に「やむをえない事情による解約の申入れ」規定を設け、この事情のときに限り解約ができるとし、責任が一方にあるときは、生じた損害を相手側に請求できると規定しています。
契約社員の解雇には、損害賠償が伴うと考えて間違いありません。天災等の不可抗力以外の原因による経営の悪化は経営者の責任とされます。従って、経営悪化を理由とした解雇では、期間満了日までの給与相当額を請求されてもおかしくありません。
第629条では、「契約更新の推定」として、更新の手続きなしに社員が満期以降も勤務していることを黙認していると、同条件で更新したと見做される規定です。契約期間に関しては見解が分かれるところですが、期間の定めのない雇用契約に転化されるとの判例もあります。
契約社員を使用する上で、契約の締結・更新は期間を含めて慎重に管理する必要があります。
労働基準法の規定
労働基準法では第14条第1項で、人身拘束の弊害を排除するために、契約期間は原則3年以下と規定しています。第2項は、「有期雇用契約の締結、更新および雇止めの基準」制定の法的根拠を規定しています。この基準では、例えば雇止めするときには「満了日の30日前に予告しなければなりません」とありますが、30日前までに予告しなくても労働基準法第20条の解雇予告と違って解雇予告手当のような手当を支払う義務は課せられていません。
労働契約法の規定
労働契約法では、第17条から第20条において有期雇用契約の規定があります。特に、平成25年4月から施行された、①第18条の無期雇用契約への転換規定、②第19条の雇止め法理の法制化は契約社員を雇用する上で無視できません。
①は有期雇用契約の更新を5年間繰り返していると、無期雇用への請求権が生ずるとの規定です。これを、正社員としなければならないと誤解している経営者もいますが、期限の定めのない契約になるだけで、他の雇用条件までを敢えて正社員と同じにしなければならない訳ではありません。
②は、最高裁判例で確立した「雇止め法理」が、そのまま規定されました。訴訟ともなると、有期雇用契約を反復更新して更新の期待感が醸成されていると雇止めの理由が客観的に合理的であることや社会通念上の相当性があることを裁判所が認めない限り、雇止めをすることができません。
有期雇用の需給調整機能その他の利点を否定するものではありません。しかし、仕事がなくなれば何時でも辞めてもらえるとの考えの元に、安易にこれを採用することは大きなリスクを抱え込むことになります。