2017年2月(第93号)
採用内定を受けた者に対して、会社は期限を定めて必要な書類の提出を求めます。それらを期限までに提出されないと会社は困ります。今回は、採用時の主な提出書類と、それを提出しない社員への対処法をまとめてみます。
採用時提出書類とは
入社時に必要な書類とは、社会保険や雇用保険の手続きに必要な書類、通勤費の支払いに必要な書類、または業務を円滑にするための書類です。求める書類は、プライバシー保護の観点から必要最小限に留め、かつ利用目的を明示しておくことが鉄則です。
主な採用時提出書類とは
多くに会社で、次の様な書類を求めています。
1)住民票記載事項証明書:現住所を確認する上で必要です。住民票の住所と現住所が異なっているときには、その理由書の提出を求めます。住民票を求めている会社もありますが、2つの理由で住民票記載事項証明書を求める方が得策です。①住民票の記載事項は概ね決まっていますが、そのフォーマットは自治体独自です。事務処理をする上で煩雑になるので、会社が作成したフォーマットに必要事項を記入してもらい、市役所で記載事項の証明を受けます。②住民票には、戸籍とか、家族関係とか会社が必要としない事項が記載されることがあります。これらが記載された住民票を提出されると、会社としてその取り扱いや保管に困ることになります。戸籍を必要とする業種や扶養手当を支給する上で家族関係を必要とする会社は、当然に求めることが許されています。
2)資格証明書、卒業証明書:運転免許や保育士免許のように業務を遂行する上で、必要な資格があります。資格を保有していることを理由に採用したのに、実際には保有していなければ直ぐにも困ります。卒業証明書も、処遇の確認に必要です。これらを求めることは当然に許されています。
3)身元保証書:万が一、従業員が会社に損害を与え、本人に弁済能力がないとき、本人に代わって身元保証人が損害賠償をするための保証書です。本人の自覚を促したり、会社のリスクを減らしたりするために求めます。身元保証人の印鑑証明を求めておくとよいでしょう。ただし、「身元保証に関する法律」で、有効期限や通知義務等の規制があります。
4)源泉徴収票:当年において給与所得があった社員には、年末調整時に必要になります。
5)年金手帳、雇用保険被保険者証:社会保険、雇用保険の加入手続きに必要になります。
6)マイナンバー:税と社会保障に利用されるために、会社は社員から取得することが求められています。マイナンバーの取得時には、ナンバー確認と本人確認が必要で、後者は運転免許証等の提示を求めることになります。
提出しない社員への対処
提出期限は、出来れば入社前日、遅くても入社後1週間に設定すると良いでしょう。正当な理由がないのに期限内に提出できない者は、入社後の仕事ぶりが思いやられます。提出されないときは、理由を確認します。正当な理由がないのに、再三の求めに応じず身元保証書を提出しなかった社員を、「社員としての適格性に疑義を抱かせる重大な服務規律違反である」として解雇を有効とした判例があります。正当な理由がなく提出を怠る社員は、辞めてもらう方が将来に禍根を残しません。