いくら注意していても、ついやってしまうポカミス。些細なことのときは大目に見られても、お客様に大きな迷惑を掛けたり、怪我をしたりしては取り返しがつきません。
ヒヤリハット活動
ミスをしたとき、それを隠したがるのは普通の人の感覚です。このミスを、白日のもとに晒すのが、ヒヤリハット活動と呼ばれる全員参加の制度です。ミスとなってしまったものは勿論、ミスにはならかったけれども不運が重なったらミスになったと思われることまでを報告する制度です。報告を簡単にするために用紙を工夫したり、書くことにあまり慣れていない人のために口頭での報告を受けたりします。
報告を集めるポイントは2つ
ヒヤリハット活動で報告を集めるときのポイントは次の2つです。
- 報告者の責任を追求しない
- 報告者の利益になる
私自身は前職の化学会社本社の環境安全部署在職中にヒヤリハットを体験しました。ヒヤリハット活動は既に国内の工場、グループ会社で定着し成果を収めていました。それではと、これを中国にあったグループ会社に持ち込みました。ところがです。1年たっても、2年たっても一向に報告が集まりません。どうも中国のその地方では事故を起こしたりミスを起こしたりして会社に損害を与えると損害賠償を要求されることが一般的だったのです。会社は、「報告者の責任は追及しない」と明言していたのですが、社員は半信半疑だったようです。
要は信頼関係
この状態を打破したのは、次の報告でした。
「梯子で屋上に行くとき落ちそうになった」
早速、管理者が確認すると確かに梯子の構造が悪く、危険な状態です。そこで、改善方法を現場の作業者に相談させ、その結果をもとにして改善工事を実施しました。この件を契機にしてヒヤリハット活動は一気に広がりました。
共通のポカミスを知ること
ヒヤリハットの最大のメリットは、ミス情報が共有されることです。自分だけが失敗していたと思っていたのと、実は他の人も同じ思いであったのとは全然違います。当然ですが、次回同じ場面に遭遇したときの注意力に差が出ます。これがポカミスを防ぎます。また、ミス情報が集められることで会社として対策を施すこともできます。
ある自動車部品の組み立て製造会社では不良品の発生に困っていました。そこで、どんな些細な異常でも報告させたところ、なんと年間で1,500件もの報告が集まりました。この報告を職場に公開するとともに丹念に対策を施すことにより、不良品の発生を従来の50%以下に抑えることに成功しました。
ミスがなくなることは会社の利益に直結します。この利益の一部を社員に還元できれば、これこそヒヤリハット報告者に対する本当の「利益」になります。こうなると社員の心構えも含めて会社の体質が相当に改善されるでしょう。
今回は、私自身も体験を含めて、ポカミスを削減するためのヒヤリハット活動を紹介しました。
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