10月号 公序良俗に反する

2016年10月(第89号)

明確な法律違反はなくても、公序良俗に反する雇用契約は無効となることがあります。今回は公序良俗に反するとされた判例を紹介します。

公序良俗に反するとは

百科事典マイペディアによると、公序良俗とは「公の秩序善良の風俗」を縮めた言葉で、「公の秩序とは,国家社会の一般的利益をさし,善良の風俗とは,社会の一般的道徳観念を指す。」とあります。公序は法律に成文化されますが、良俗は一般的道徳観念なのではっきりしません。その一方で、民法第90条に、「公序良俗に反する事項を目的とする法律行為は無効である」とありますので、裁判所は公序良俗に反する雇用契約を無効と判示することがあります。

宣伝会議事件

採用前研修不参加で内定が取り消された事件
大学院博士課程に在籍する大学院生が、年度末までに博士論文審査を終えることを条件として、6月に内定通知を受けた。その際、試用期間が3ヶ月あること、10月から多少の課題が出される2、3時間程度の研修に参加しなければならないこと等の説明を受けた。その後、数回の入社前研修に出席したが、研究との両立に困難をきたすようになり、それ以降の研修に参加しなかった。すると会社は、研修の遅れを理由に、試用期間を延長するか博士号取得後に中途採用試験を受け直すか選択するよう求めた。選択を拒否したところ、採用を辞退したとされたため、違法な内定を取り消しに対して、逸失利益、慰謝料及び弁護士費用の賠償を請求した。
裁判所は、入社前研修を課すことは、公序良俗に反し違法とし、不参加を理由とした不利益取り扱いに対して損害賠償の義務を負うと判示した。

三田エンジニアリング事件

競業避止規定の有効性が争われた事件。
ビルの空調システムの保守点検会社に勤務していた社員が、退職後直ぐに同業他社に転職した。就業規則には、退職後1年間の競業禁止、違反時は退職金を返還する旨の規定があった。会社は、競業避止違反として、退職金の返還を求めた。
これに対して裁判所は、競業禁止規定により禁止できるのは、①営業機密の開示、漏洩、あるいは第3者に使用させるとき等に限定されるべきものである、②機械メーカーの操作説明書に従って行う保守点検作業は営業機密に当たらない、③競業禁止規定に代償措置が講じられていない、ことから職業選択の自由に対する過度な制約となり、公序良俗に反し無効である判示した。

穂波事件

固定残業代の有効性が争われた事件
飲食店の店長に管理職手当として毎月10万円が、みなし残業手当83時間相当分として支給されていたが、時間外・休日・深夜割増賃金が不払いとして訴えられた事件。
裁判所は、①月83時間の残業は、36協定で延長できる月45時間の限度時間の2倍に近い長時間であり公序良俗に反するために無効、②時間外労働が月に83時間も発生することは想定しがたく、そもそも残業手当の性質がなかったとした。よって、管理者手当は月によって定められた賃金であり、時間外労働等の割増賃金の基礎とすべきであると判示した。

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