経営する中では、ときに社員に辞めてもらわなければならないことがあります。しかし、辞めさせ方を誤ると大きな労働トラブルになります。今回は、社員に辞めてもらうときのポイントを退社の型別に紹介します。
退社の型
社員が退職する型は次のようになります。①死亡退職、②自己都合退職、③定年退職、④休職期間満了による退社、⑤契約期間満了退職、⑥退職勧奨による退職、⑦解雇による退職。①~③の型のときはあまり問題になりません。しかし、④~⑦の型については、時に大きなトラブルに発展して解決までに時間と労力とお金が掛ります。
休職期間満了による退社
業務外の傷病、その他によって業務ができない社員に休職制度を設けている会社があります。休職期間満了時にトラブルとなるのは、次の2つに問題があるときです。①復職のルールが不適切、②休職期間満了時の退社ルールが不適切。トラブルの防止には、就業規則に①と②のルールを適切に規定しておくことがポイントです。
契約期間満了による退社
何回も契約更新を繰り返していると次回も契約更新することへの期待感が高まり、この期待感に合理的な理由があるときは、簡単に雇い止めすることができません。裁判所で、雇い止めを無効とした判決がいくつか出ています。また現在、労働契約法の改正案の一つに雇い止め法理の制定法化が検討されています。トラブルの防止には、契約期間満了時の契約更新、非更新の基準を前もって周知しておくことがポイントです。
退職勧奨による退社
退職勧奨による退社とは、会社のお願いに社員が合意して退社することです。合意は社員の自由な意思でなされなければなりません。退職を強要することは法違反となります。強要の場合には、例え退職届を受け取ったとしても、退職が無効となります。「分かりました」との言葉だけで合意が得られたと早合点することはできません。退職のお願いを解雇と思い込んで「分かりました」と答えることがあるからです。トラブルの防止には、時間を掛けて十分に納得した上で退職届を提出して貰うことがポイントです。
解雇による退社
理由はともあれ、一番労働トラブルに発展するのが解雇です。労働契約法第16条には、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」とあります。「客観的に合理的な理由」とは、就業規則に規定してあり、その事実が客観的に証明されることです。そして「社会通念上相当である」とは、解雇が誰から見ても重過ぎないことです。トラブルの防止には、就業規則に解雇事由を記載し、かつ解雇に至るまでの社員の行動や社員への指導履歴を記録しておくことがポイントです。
退職時は会社へのロイヤルティーが最も低下します。下手をすると在職時の不平、不満が一気に爆発することもあります。理由はともあれ退社する社員の身になって、懇切丁寧に時間を掛けて進めることが何よりも大切でしょう。