2013年4月 (第47号)
残業手当は1.25倍になることはよく知られています。一方、何を基にした1.25倍かと改めて問われると、答えに窮する方も多く見受けられます。今回は、割増給与にまつわる疑問点を中心に整理してみます。
割増給与とは
労働基準法で割増給与を規定されているのは、①時間外勤務、②深夜勤務、③休日勤務に対してです。①の時間外勤務とは、原則として1日8時間、1週40時間を超えて勤務したときです。②の深夜勤務とは、午後10時から午前5時までの勤務、③の休日勤務とは原則1週間に1日も休日なく勤務したときです。①は1.25倍、②は0.25倍の加算、③は1.35倍を支払わなければなりません。時間外勤務が深夜に及んだときは、1.25+0.25で1.5倍、休日勤務が深夜に及んだときは1.35+0.25で1.6倍となります。休日勤務には時間外勤務の概念がありませんので、休日の勤務時間が例え8時間を超えても1.6倍とはならないで1.35倍のままになります。
計算基礎となる通常給与とは
割増給与の単価は1時間あたりの通常の給与に割増率を掛けて算出します。では、通常の給与とは何でしょうか。
通常の給与の原則は、労働の対価として支払われた全ての給与です。しかしながら労働と直接に関係しない福利厚生的な手当を中心に7種類が例外的に通常の給与から除外できるとして限定列記されています。これら7種類とは、①家族手当、②通勤手当、③別居手当、④子女教育手当、⑤住宅手当、⑥臨時に支払われた給与、⑦一ヶ月を超える期間ごとに支払われる給与です。これら以外は全て通常の給与として割増計算の基礎に算入されます。
名称ではなく実質で判断します。住宅手当や家族手当の名称であっても、住宅や家族に掛かる費用と関係なく、例えば年齢や役職により手当額が決められていると、通常の給与になります。
通常給与の単価計算
給与には時給、日給、月給、歩合給と種々あります。期間で定められた給与の単価は、原則として給与をその期間の所定労働時間で割って計算します。歩合給も除外できる給与に列記されていませんので、割増計算の基礎となる通常の給与になります。歩合給の単価は、歩合給を、その期間の総労働時間で割って算出します。
複数の種類で構成されている給与体系のときは、各々の種類ごとに単価を計算し、これらを加算して通常の給与単価とします。
給与トラブルを防ぐために
給与の不払いは別として、給与をめぐるトラブルの多くは割増給与に関するものです。そのためにも、労働時間を適切に管理し、記録を取っておくこと、そして記録に基づいて割増給与を適法に計算して支払うことが重要です。
1日8時間、1週40時間の労働時間の原則に関わらず、割増給与を支払わない制度として変形労働時間制があります。少し複雑なので、この制度については改めて紹介することにします。