11月号 計画運休時の休業

2019年11月(第126号)

台風等の接近の伴い公共交通機関が事前に計画運休の可能性を発表するケースが定着してきました。それに伴い会社もその日を休業にするか否かに迷います。
今回は、計画運休に伴う休業時の取り扱いについて法律的側面と労務側面から考えてみます。
 一般的な休業の取り扱い 
天災により事業ができなくなったときや、法定伝染病に罹った社員に休業命令を発したときは会社に責任がないとしてノーワーク・ノーペイの原則が適用されます。反対に正当な理由のない休業命令には、民法または労働基準法により会社に給与補償の義務が課せられています。
 計画運休時休業の法的取り扱い 
台風の接近に伴い大雨や強風が予想されるときに事前に公共交通機関では計画運休の可能性を発表するようになりました。これに対して、会社の取りうる方法は次に3通りになります。
  ① 計画運休の有無に関わらず通常通りの勤務
  ② 実際に計画運休のときは休業
  ③ 計画運休の可能性が濃厚な時点で休業
 ①の通常通りのケースでは、実際に出勤できない、あるいは遅刻をする社員が出る可能性があります。このときはノーワーク・ノーペイの原則に基づいて給与をカットすることは法的に許されています。とはいえ、通常通りの勤務を求めたことにより通勤途上で社員が怪我をする可能性があります。実際に怪我をすると会社は安全配慮義務違反を問われ損害賠償を請求される可能性があります。②の実際に計画運休されたときに休業するケースでは、運休により事業運営ができないのであれば、その休業は会社の責任とは言えません。したがって、①と同様に給与をカットすることは許されています。難しいのは③のケースです。計画運休の可能性が濃厚であるとはいえ、まだ実際に計画運休が行われている訳ではありません。会社としては、社員やお客さんの安全性、事業の採算性、混乱の回避等を考慮してこの意思決定をしたはずです。となると、この休業は会社都合となり労働基準法第26条の規定に基づき休業手当の支払い義務が生じることになります。
 計画運休時のルール作り案 
 計画運休は今後も続くと思われます。会社としてルールを整備しておくことは労務管理上から有用であると考えます。ただし、事業内容や社風、財務状態により会社の状態は違うので、すべての会社に最適な案を提示することはできません。次の規定案は参考例の1つです。

第〇〇条 (計画運休時の取り扱い)
  台風の接近等で計画運休の可能性が濃厚と〇〇長が判断したときは、臨時休業を命じる。
 2. 臨時休業期間中は平均賃金を支払う。

 平均賃金は、過去3か月間の総支払額をその期間の歴日数で除した金額です。日給1万円の社員では毎月21日間勤務とすると総支払額は63万円。歴日数は91~92日ですので、平均賃金は6,900円強となります。休業手当はこの平均賃金の60%です。
 平均賃金の60%の休業手当を支払うことで例え会社都合の休業であっても法的な義務は果たしています。上の案では社員感情と会社負担のバランスを取って平均賃金の支払いとしてみました。

社会保険労務士丸山事務所は、「会社の発展とそこで働く社員の幸福の実現」を全力で応援します。

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