リアリティー・ショック

2020年 2月(第129号)

理想と現実とのギャップに悩む現象をリアリティー・ショックと言います。これが新入社員に発生すると、短期退職に留まらず会社の活力を奪う原因にもなります。今回は、リアリティー・ショックの発生要因及び防止対策を考えてみます。

リアリティー・ショック発生の社員要因

社員側の要因として、①社会を甘く見ている、②完璧主義である、③○○はこうあるべきとの頑なイメージを持っている等が挙げられます。いずれにしても社員本人の持っていたイメージと現実との間にギャップを生じ、これにより自信やモチベーションを喪失する現象です。

リアリティー・ショック発生の会社要因

ある研究では、会社において4つの要因がリアリティー・ショックの発生に関わっているとしています。①仕事:バリバリ仕事ができると思って入社したら、書類整理やコピー等の地味な作業ばかりであった、あるいは能力以上の仕事を与えられた、長時間の残業を強いられた。②対人関係:部署やチームの者との人間関係がうまく築けない、③他者能力:上司や同僚が優秀な者ばかりで気後れする、逆に能力の低い者ばかりで尊敬できる先輩がいない。④評価:給与、昇進に関して自分で思っていた以上に差がある。

この中で、最重要なのが②の対人関係です。

リアリティー・ショックの防止対策

せっかく採用した人材が、能力を発揮できないうちに辞めてしまうことは、本人はもとより会社にとって損失です。そこで、リアリティー・ショックを防止する対策例をいくつか示します。

対策は入社前と入社後に分けられます。
(1)入社前の対策
①会社方針、業務内容の説明:入社応募者に対して会社の理念や方針、価値観、会社の求めている社員像を伝えることは重要です。さらに入社後の仕事を具体的に説明しておくことが仕事に対するショックを和らげます。可能であれば、インターン制度を取り入れ実際の仕事を体験させることも有効です。
②適性検査:個人の資質や特性の全体像が具体的に把握するための適正検査があります。過度な期待や決めつけは禁物ですが、リアリティー・ショック発生の社員要因の有無を評価する手がかりを与えてくれます。
(2)入社後の対策

①メンター制度:メンターとは、仕事上の指導者または助言者の意味です。メンター制度とは、新入社員などの精神的なサポートをするために専任者をもうける制度のことです。信頼のできるメンターには悩みを相談することもできますし、メンターを通じて良好な対人関係を築くことができます。結果としてショック発生の会社要因①の仕事や②の対人関係に有効です。

②キャリアパスの整備:どのような技術や能力を高めることによって、どのような役割や報酬を得られるかを示すのがキャリアパスです。この整備によって、③の他者能力や④の評価によるショックを和らげることが期待できます。

まとめ

ここに示した対策例はほんの一例です。入社後短期間で退職する社員が多いときは、退職原因を分析し、それがリアリティー・ショックであれば、その発生要因を特定することから発生要因に応じた対策を講じることになります。

社会保険労務士丸山事務所は、「会社の発展とそこで働く社員の幸福の実現」を全力で応援します。