6月号 社員とトラブルが発生したら

あってはいけないことですが、万一社員との間でトラブルが発生してしまったらどうしますか。残念なことですが近年、会社と社員間のトラブル、いわゆる「個別労働関係紛争」が多発する傾向にあります。ここでは、個別労働関係紛争の解決のための制度を整理してみましょう。

総合労働相談コーナー

会社と社員との間のトラブルが、法令の不知を原因とすることがあります。昨今はインタネットにより誰でも簡単に情報を得ることができます。それにより法令への理解が高まっているのは事実です。反面、聞きかじりの知識でトラブルに発展することもあります。例えば今年4月の労働基準法改正により、有給休暇を時間単位で取得することができるようになりました。実際には、年に5日分を上限に労使協定を結ぶことによって初めて可能になる制度です。「時間単位の有給休暇を認めないのは労働基準法違反だ」と社員が言えば、「中小企業がそんなこと認めていたらつぶれてしまう。文句があるなら辞めてしまえ!」と会社が応酬する。こうなってはいけません。労働基準監督署や社会保険労務士会内に労働相談コーナーがあり、電話や往訪により労働法の相談に無料で乗ってくれます。このような機関の手助けを得て、法令の不知によるトラブルを解決することができます。

あっせん制度

法令を正しく知っても解決しないトラブルは、双方でよく話し合わなければなりません。ところが、顔を合わせると口論になったり、感情的になったりして上手くいかないことがあります。顔も見たくないといったこともあります。話し合いの余地はあるのに、それが上手くできないときは「あっせん制度」の利用が便利です。都道府県の労働局で受け付けています。中立な立場のあっせん委員が会社と社員から別々に意見を聞き、法令や判例を参考に、あっせん案を提示します。裁判で争うときのメリット、デメリットとあっせん案を受け入れるときのメリット、デメリットを比較して判断します。双方が案を受け入れれば即解決です。あっせん案には法的強制力がありませんので、不服のときは拒否できます。

労働審判制度

会社と社員間のトラブルを裁判所で専門に扱う労働審判制度が整備されています。申し立て費用は民事訴訟の半額、また迅速な解決を目指して3回以内の審理で終了します。審判結果は通常の裁判の判決と同じく強制力があります。このように簡便かつ迅速な審判が得られるために、裁判所の関与する事案が増加傾向にあります。審判に不服のときは、異議を申し立てることにより通常の裁判に移行することになります。

今回は、会社と社員間のトラブル解決制度の一部を紹介しました。トラブルが発生してからの対策は生産的でありません。生産的ではなくとも、トラブルが起きてしまったら迅速に対処しなければなりません。ここで紹介した労働相談コーナー、あっせん制度についての予備知識を日ごろから収集しておくことが、リスク対策として役立ちます。労働法に精通した社会保険労務士の利用も効果的でしょう。

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