扶養の範囲内

Q: パートで採用を予定している女性が「扶養の範囲内で働く」ことを条件としています。会社としてはどのようなことに注意をしたらよいでしょうか。

A: 税法上では年末までの給与支払い額、社会保険上では時給および勤務時間条件を扶養の範囲内に調整することになります。

(1)税法上の扶養
1月1日から12月31日までの給与収入が103万円以下に収まることが必要です。会社としては、1月からの累積支払い額を把握して103万円を超えての支払いにならないように残業命令等を制限する必要があります。

(2)社会保険上の扶養
税法上の扶養要件が年間の収入実績であるのに対して、社会保険上の扶養要件は年収の見込み額が130万円未満です。月々の給与額が130万円を12で割った108,333円以上の雇用条件のときは、年間収入が130万円以上になると見做され、その時点で扶養から外れることになります。よって月額収入が108,333円未満になるように時給や所定勤務時間を調整することが求められます。この収入には通常の賞与や非課税の通勤手当も含まれますので注意が必要です。

健康保険組合は定期的に扶養の要件を満たしていることを確認しています。協会けんぽを例に採ると毎年10月下旬から11月上旬にかけて、「被扶養者状況リスト」を夫の会社に送っています。これを受けた会社は社員に対して対象の被扶養者が健康保険の被扶養者要件を満たしていることを確認します。確認方法は会社によって違いがありますが、

  1. 雇用条件通知書
  2. 直近数ヶ月の給与明細書
  3. 課税証明書の提出

を求めるところがあります。

1の雇用条件通知書で月額108,333円を超えていれば即被扶養者の要件から外れます。2や3で月額108,333円や年額130万円を超えているときは、それが一時的な収入変動であるか否かを確認します。社員が一時的な収入変動でないと認めれば被扶養者から外します。一時的となれば、被扶養者の会社に対して「被扶養者の収入確認に当たっての『一時的な収入変動』に係る事業主の証明書」を求め、これを添付して健康保険組合に提出します。

健康保険組合はそれを基に被扶養者認定を行います。もし健康保険組合が認定しないと、被扶養者資格と同時に国民年金保険の第3号被保険者資格も失いますので、パート社員は新たに国民健康保険および国民年金保険の加入手続きが必要になります。

被扶養者として認定するのは、このケースではパート社員の夫が加入している健康保険組合です。雇用条件を決めることと事業主の証明書を求められたときに応じること以外に貴社がしなくてはならないことはありません。

(2024年 6月)

社会保険労務士丸山事務所は、「会社の発展とそこで働く社員の幸福の実現」を全力で応援します。