残業時間の上限設定

Q: 長時間労働による健康障害を心配して残業時間の上限を月40時間と定めました。すると残業手当が減ったのは会社が一方的に上限を定めたためで、不利益変更にあたると苦情を受けました。不利益変更でしょうか。

A: 一般的には不利益変更にあたりません。

不利益変更とは、契約内容を会社が一方的に変更して、その結果として社員に不利益をもたらすことを言います。労働契約法第8条では、次の様に契約内容の変更手続きを規定しています。
「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。」
この規定の反対解釈は、「合意がないときは、契約内容を変更できない」となり、不利益変更は原則できないとされています。

ご質問の残業時間の上限設定が不利益変更に該当するか否かについては、次の2つのケースが考えられます。
① 残業時間は40時間超との契約はなかった。
② 月40時間超の残業は契約内容の一部であった。

雇用契約書や就業規則のような文書だけでなく、口頭や実質の勤務状況でも契約内容となりうるので、それらを含めて、①、②のどちらかに該当するかです。固定残業代が40時間超支払われているケースは②になります。
①のケースは、そもそも契約内容の変更にあたりませんので、不利益変更となる余地はありません。①のケースが圧倒的に多いので、「一般的には不利益変更にあたりません」としました。
②のケースは不利益変更ですが、有効に変更することは可能です。この変更の手続きは労働契約法第10条に規定されています。この手続きは就業規則を変更することで行います。第10条の趣旨は、就業規則の変更による社員の不利益と会社の必要性を比較して、変更が合理的であれば有効とするものです。今回の変更は社員の健康を気遣ってのことですので、合理的と認められる公算が大きいと思われます。
ただし、残業時間の上限設定に、①人員の増強、②必要性の少ない業務の廃止、③業務効率化等の残業削減の施策が伴っていなければサービス残業を強いる結果となり、変更は無効となります。

社会保険労務士丸山事務所は、「会社の発展とそこで働く社員の幸福の実現」を全力で応援します。

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