退職代行ユニオンを通じての退職

Q: 長らく欠勤中で連絡が取れなかった社員から退職代行ユニオンを通じて社有携帯電話、健康保険証等と共に退職届が送られてきました。退職届受理の可否および退職に際し行うべきことについてご教示ください。退職届には退職日までの有給休暇を消化する旨が書かれ、着信は退職希望日の翌日でした。

A: 退職代行ユニオンを通じての退職届でも有効です。有給休暇は貴社の規定に基づいて処理します。

(1)退職の受理

今回のケースでは退職代行ユニオンを経由していても退職届原本が手元に届いており押印もあるので有効で、受理可能です。

(2)規定違反

退職届の到着が退職希望日の翌日です。退職の申し出が貴社規定の1ヶ月前、民法規定の2週間前にも反しています。貴社に規定があり、必要ならば懲戒処分をすることは可能です。

法律的には欠勤により会社に損害が発生したならば、損害賠償を請求することは可能です。とはいえ、賠償金額の算定の根拠を示すことは困難ですし、根拠を示して請求したところで支払いまでもっていくことは中々困難であることが実情です。

(3)有給休暇申請

本人は退職日まで有給休暇を消化すると都合のいいことを言っています。貴社が有給休暇の事後申請を無条件に認めているならば話は別ですが、労働基準法では事前請求を前提にしています。事後申請の有給休暇を認める必要はなく欠勤扱いできます。

この後は余談です。

退職代行業者の存在は知っていましたが、退職代行専門の労働組合があることは初めて知りました。労働組合なので団体交渉を申し入れることができ、これを正当な理由なく拒むことは労働組合法の不当労働行為に該当する可能性があります。

本来の団体交渉は集団的労働条件を交渉する場であり、個々の労働者の救済を取扱う場ではありません。しかし現在の労働組合において個々の組合員の要求を実現することも重要な課題となっており、労働委員会でも裁判所でも個人的労働条件も義務的交渉事項であると解釈しているようです。

よって議題はともかく理論的には団体交渉を申し入れてくる可能性はゼロではなく、申し入れがあれば正当な理由なくこれを拒むことはできません。

(2023年11月)

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