有給休暇は良く知られた制度ですが、意外と知らないことがあるものです。ここでは、当事務所に寄せられた質問を中心に、有給休暇手当について整理してみましょう。
有給休暇手当の算出方法
労働基準法では次の3つの算出方法が認められています。①通常の賃金、②平均賃金、③労使協定により健康保険の標準報酬日額に相当する額。算出方法によって、手当額が変わってきます。
会社が、この人は通常の賃金、あの人は平均賃金と勝手に算出方法を変えることはできません。もっとも正社員とパートタイマーとで別の方式を採用することは問題ありません。就業規則に明確に規定しておきます。
当然ですが、支払い月によって勝手に算出方法を変えることは許されていません。
有給休暇を使ったら給料が減額した
有給休暇を使ったら、その月の給料が結果的に減額になったとしても、必ずしも違法とは言えません。特に上の②の平均賃金を採用しているときには、大きく減額になるときがあります。理由は、平均賃金の算定方法を確認するとよく分かります。
通常の賃金に基本給しか入れられていない
通常の賃金による有給休暇手当とは、その日通常通り働いたものとして支払われる手当です。この手当の算出方法は労働基準施行規則第25条に詳細に規定されています。これによると、時間、日、週、月、その他一定の期間によって定められた賃金は全て有給休暇手当に算入されることになっています。また、時給で定められている人であっても、例えば月毎に皆勤手当が支給されていれば(その部分は月で定められている賃金となり)、有給休暇手当に算入させることになります。
歩合給のとき
タクシー運転手や営業担当者に、基本給をある程度抑えて実績に応じての歩合給を支払っている会社があります。このとき、有給休暇手当を基本給だけで算出することは、適正でありません。前述の施行規則第25条には、歩合給のときの有給休暇手当の算出方法も規定されています。
その他の手当
時間外手当は、有給休暇手当に算入させる必要がありません。深夜勤手当も原則は算入不要ですが、深夜勤務を専門としている人には、深夜勤手当を含めた賃金が通常の賃金となります。賞与、慶弔手当は算入不要です。通勤費は、会社の規定によります。毎月定額支給であれば、算入されます。実費を基にした支給であれば、算入不要となります。
その他に灰色の手当があります。例えば、危険手当。毎月定額支給のときは算入します。作業日毎に支払うときには、算入不要と考えます。しかし、ほぼ毎日のときは?
日祝祭日の勤務者に支給する祝祭日手当は?筆者は算入不要と考えていますが、専門家の中にも算入必要としている意見の人がいます。
トラブルを回避するために
お金にまつわるトラブルは、一旦起きてしまうと感情面の対立となり、額の問題でなくなります。その意味で、法に規定されている手当は、当然ながら確実に計算して支払わなければなりません。灰色部分の手当を有給休暇手当に算入しないときは、その理由をいつでも説明できるように整理しておくことが肝心です。