従業員満足度向上は企業の業績を押し上げます。社員が活き活きと働くことにより、業績が向上する。誰が考えても当たり前です。この従業員満足度向上策の一環として、休職制度を導入する会社が多くあります。もし病気で休むようなことになったら職を失うかもしれない。生身の社員としては、そんな不安が頭をよぎることもあるでしょう。そんな社員の不安を少しでも低減しよう、それが社員のためになる。そう考えて休職制度を導入し、これを就業規則に盛り込みます。決して間違っている訳でありません。
さて、社員が不幸にも病気に罹ってしまいました。会社によっては、6ヶ月の病欠後に一年の休職期間が設けられているところがあります。一年半の長きに亘って職場を離れることになります。その間も、その社員が行っていた業務は発生しています。一週間、二週間であれば周りの仲間が多少無理をして、その業務をこなすことでしょう。ところが1年半です。それは、限界を超えるでしょう。会社は、業務をこなすために新しい人を入れざるをえません。
やがて、病気が癒えて職場復帰の日を迎えます。ところがです。その社員の戻るべき職にはすでに新しい人が頑張っています。その人を押しのけて、復帰させることはできますが、一年半のブランクのある人よりも、現に仕事を支障なくこなしている人を続けて使いたくなるのは自然です。とすると、新しい業務を与えなくてはなりません。成長している会社であれば、仕事はいくらでもあります。しかし、そうでない会社になると、新しい業務を与えることは困難です。
そこで、職場復帰を阻止する力が働きます。診断書は信頼できない。まだ、十分に働くことはできないのではないか。ちょっとしたミスも病気が癒えていないことにする。そんなこんなで職場にいずらくして退職を迫る。せっかくの従業員満足度向上策としての休職制度が反対に労働トラブルを引き起こす原因となるケースを目にします。
休職制度を全て否定している訳ではありません。従業員満足度向上に繋がるのであれば大いに奨励したい制度です。しかし、職場復帰を前提にした制度でなければ意味がありません。そのために休職期間は、多少無理をしてでも、人を補充しないで済む期間に設定すべきです。そうすれば、職場の人は復帰を待ち望みますし、実際に復帰を喜びを持って迎えるでしょう。無理をして制度を作っては、誰の役にも立ちません。就業規則は役に立つことを制度として作ることが肝心です。