「事務所通信」カテゴリーアーカイブ

感染症対応休業支援金、給付金

新型コロナウイルスの濃厚接触者を出した会社さんから、外出禁止期間の給与について先日相談があった。そのときは、会社が休むように言っていない限り、休業手当を支給すること会社の義務ではないですね、と話した。会社として、今後どのくらい濃厚接触者が出るかわからない状態で、休業手当を支給することに躊躇するのはよくわかる。

今回、改めて相談があった。「濃厚接触者に公的な支援はないものでしょうか」、と。

休業手当を支給されない方に、「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金、給付金」なる制度があったことを思い出した。これが使えれば濃厚接触者に役立つかも。

しかし調べてみると、これは休業手当を支給しない会社に勤務する方への救済策だ。法的に休業手当の受給ができない方を対象にしているものではない様だ。無駄足覚悟でコールセンターに問い合わせしたところ、「会社から休むように言われていますか」と問われた。やはり、会社が休むように言っていない以上、この支援金、給付金の対象ではないのだ。

その上で、担当者は次のように加えた。「この制度を使ったとしても、会社の休業手当不支給を咎めるものではありません。」、と。違法ではあってもコールセンターは労働者の救済を優先すると解釈した。この制度を使うことに同意することは、休業手当の支給が必要なのに会社はそれをしなかったことを認めたということになる。労働基準監督署とは、同じ厚生労働省とは言え別の組織だ。コールセンターは咎めなくても労働基準監督署が黙っている保証はない。

会社の担当者には、休業手当を支給する・しないは会社の判断でしてよいが、感染症対応休業支援金、給付金を使わせることは勧められないと伝えた。

健康保険に加入していても、濃厚接触者が労務不能と認められない限り傷病手当金を受給することもできない。

政治家の助成金受給

自民党の石原伸晃氏の選挙区支部が「雇用調整助成金」60万円余を受け取っていたことがニュースになった。雇用調整助成金は景気の変動等により売上等が減少し社員を休業手当を支払って休ませたときに支給を受けることができる助成金です。新型コロナウイルスの感染拡大に合わせて受給要件や支給額の特例が設けられ幅広く支援する制度で多くに会社が助かっています。

石原氏の政治団体の受給が適法であったか否かは新聞記事からは読み取れません。しかし、違和感があったのは確かです。

石原氏の選挙区支部では新型コロナウイルスの特例を用いていたようです。そうすると売上というか収入が減った原因は新型コロナウイルスの感染拡大であることが要件の1つです。政治団体の収入は普通の会社と違って月々で安定したものではないでしょう。売り上げ減少は前年同月に比べて5%減少していることが特例での要件です。安定していない収入がたまたま5%減少したからと言って、これを新型コロナウイルス感染拡大のためと助成金を申請したならば、これはおかしな話です。申請時には「雇用調整事業所の事業活動の
状況に関する申出書」添付し、売上減少と新型コロナウイルス感染症との関わりについて具体的に記述することになっています。この記述をどのようにしたのか、是非とも拝見したいものです。

その後、自民党の山本左近氏、立憲民主党の阿部知子氏、岡本章子氏や公明党の里見隆治氏の政治団体でも助成金を受給したと話題になった。こちらは雇用調整助成金ではなく、新型コロナウイルスの感染拡大によって幼稚園が休園したり小学校が休校となり、職員が休まざるを得なくなったことに対する助成金だ。政治家が助成金を受給するのはおかしいとの声に押されて返金手続きをするというが、これまた逆におかしな話だ。政治家が特権を使ったとか、利益誘導をしたなら話は別だが、この件に関しては堂々と受給したらよいと思うことしきりです。

クラウドシステムの停止

電子申請用に契約しているクラウドシステムがトラブルのため昨日朝から停止してしまった。今日の朝になってやっと復旧したようだが、まだ動きは遅いままだ。毎月月初は先月末日に退職した方の離職票の申請や高年齢者雇用継続給付の手続きでいつもよりも利用頻度が高い。それを1日近く利用できない状態が続いてしまったことは辛い。このような事故は既に5年以上も利用しているが初めてであった。

それにしても、システムが止まると手続きが全くできなくなる事態を体験した。今後のことを考えると何らかの代替手段を講じておかなければならないと痛感したところです。とは言え、代替手段は難しい。マイナンバー一つとっても事務所にコピーを保管しておくことは管理体制の観点からリスキーだし、2つの会社と契約をしたところで金銭面の問題だけでなく情報の同期をとることができないので代替手段として機能させることが困難だ。

電子申請のクラウドシステムは便利ではあるが、反面事故に際して危ういという難しい問題に直面してしまった。

健康優良法人認定制度

近所の会社さんから頼まれて経済産業省が実施している健康優良法人認定制度(中小規模法人部門)の取得を支援しました。近所の社会保険労務士を探して、弊事務所を指定してくれた次第です。

昨今の過労死であったり、メンタル不調を訴える社員が増加していることであったりを背景に、企業による社員の健康への配慮、気遣いがクローズアップしてきています。健康優良法人認定制度はまさに、このような事態を防いだり減少を図っている会社を認定し、さらなる向上を促すための制度です。経済産業省が実施しているのは中小企業庁を抱えているためでしょうか。本来ならば厚生労働省ではないだろうかと、社労士としては思ってしまします。

支援した会社は社員数十数名ですが、社長さんの人柄もあって社員の健康管理に意欲的に取り組んでいる会社さんでした。そのため、認定申請書の作成は非常にスムーズに進み、申請書提出に至りました。

認定の結果は来春の2月になるとのこと。今回、無事に認定を受けたとしても来年は更なるレベルアップを図って取り組むことになります。

有給休暇の付与日数

ときどき、顧問先でない会社の社員から相談の電話を貰うことがあります。

今回、女性の方から相談を受けました。

その方は、正職員として医院に5年勤めていましたが、体力的な理由で週2日間のパートタイマーに転換してもらいました。

週に2日間でしたので、離職票を発行してもらいました。

その後、事情があって医院をやめることにしたので有給休暇を申請しようとしたところ、医院の顧問社会保険労務士から、退職して離職票も発行しているので正職員時の有給休暇は消滅していると言われたそうです。

その真偽を確認するための電話でした。

この場合、相談者の話が本当であれば、雇用関係が正職員のときから継続していますので、有給休暇の勤続年数も継続し有給休暇が消滅することはありません。

医院の顧問社会保険労務士が、この様な発言をした理由は次のいづれかでしょう。

① パートタイマーに転換した事業を把握していなかった

② 離職票の発行をもって、雇用関係が一旦中断されたと誤解した

③ 労働基準法上の勤続年数の概念を理解していなかった

④ 顧問先の医院の利益を優先した

①や②の理由であれば、確認不足の責はありますが、まだ許されます。

③も労働基準法をよく知らなかったこともあるので、今後勉強することで許されます。

もし、④の理由でこのような発言をしたとなると、虚偽の指導をしたことで社会保険労務士の倫理規定に抵触することになります。

また、医院の職員に対する信頼関係を壊すことになりますので、医院に対してもデメリットを与えることになります。

我々、社会保険労務士は会社とそこで働く社員の両方の味方となりたいと日々意識しております。

その意味で、考えさせられる相談でした。