休職期間満了時の退職

Q: 昨年9月から意識不明で休職している社員がおります。就業規則では休職期間が1年間となっているため、この9月で退職となります。ご家族から、「事業主の都合による離職」にして欲しいとのことですので、雇用保険の喪失原因を「退職勧奨」にする積りです。会社に不都合はないでしょうか。

A: 「事業主の都合による離職」の是非ですが、当方としては同意しかねます。

休職期間満了による(自然)退職に関しては、「解雇である」との解釈があることは存じています。しかし、当方としては条件が満たされたときの自然退職の方が理にかなっていると思います。
随分と古いのですが、
     休職期間満了による退職が、就業規則に明記され、かつ例外的な運用がなければ「自然退職」として定年退職と同様に扱われる。
という行政通達(昭和27年7月25日基収1628号)があるようです。

「事業主の都合による離職」としたときは解雇となります。このデメリットとしては、キャリアアップ助成金や特定求職者雇用開発助成金の雇用に関する助成金が制限を受けます。もう一つ、「解雇は無効」と訴えられる可能性がゼロではありません。

ご家族の「事業主の都合による離職」を希望した理由が分かりません。通常は雇用保険の基本手当が早くもらえたり、額が多くなったりすることで「事業主の都合による離職」を希望します。しかし、本人はまだ意識が戻らない状況で求職することがきません。当然に雇用保険の基本手当は受給できません。将来、意識が戻り求職が可能になることを見据えているならば、むしろ手当の受給期間の延長手続きを勧めてください。最大で3年間を原則の受給期間1年間に加えることができます。

会社としては、「就業規則による休職期間満了による退職とする。」旨の通知書を送付してください。離職票には、離職理由を「自然退職」として具体的事情記載欄には「休業期間満了による退職」の旨を記載します。

ご家族の方の意向に沿わない代替ということではありませんが、ご家族が希望して会社として無理でなければ、傷病手当金の支給申請をお手伝いしてあげることは如何でしょうか。更にその後に障害年金の支給申請がありますが、そこまで会社がするのは少し荷が重いので必要ならば誰かを紹介してあげてください。

☆ 「事業主の都合による離職」とした場合は解雇になります。「退職勧奨」はあり得ません。「退職勧奨」では、それを受けた本人が同意したときだけ「退職」が成立します。今回のケースでは、本人の意識がないので「退職」は成立しません。

(2025年 8月)

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