8月号 外国人の雇用

2025年 8月(第195号)

今月の事務所通信では、外国人雇用において会社が留意すべき法的・実務的ポイントを整理しております。雇用保険の届け出義務、不法就労防止のための在留資格確認、安全配慮義務としての多言語対応、さらに特定技能外国人への生活支援義務など会社に求められる対応は多岐にわたります。外国人労働者の雇用をお考えの会社ではコンプライアンス体制の強化や社内ルールの見直しが求められます。

外国人を人手不足解消のために雇用する会社が増えています。今月は、外国人を雇用するときに会社が特に重点的に押さえるべきポイントを整理してみました。

届け出

会社は雇用保険の加入有無やパート、アルバイト、短期間雇用等の雇用形態にかかわらず、外国人を雇い入れたときや離職のときに「外国人雇用状況届出」をハローワークへの届け出義務があります。これは雇用対策法による法定義務です。怠った場合には30万円以下の罰金が科される可能性があります。

不法就労防止

在留カードや資格の有効性の確認、コピーの保存は必須です。不正就労は主に次の3つケースに分類されます。①在留期間が切れたオーバーステイ者、密入国者等が就労する。②観光目的の「短期滞在」等の就労が認められていない在留資格で働く。③許可された活動の範囲を超えて働く。①や②が不法就労であることが明確です。③の「活動の範囲を超えて」では、例えば「料理人として許可された者が同じ店の事務に従事」したときでも不法就労となるので注意が必要です。

会社が外国人の「不法就労」を許した場合には不法就労助長罪として、5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金、またはその両方と非常に重い罰則が課せられます(入管法第73条の2)。上の3つのケースで罪名や罰則が変わることは基本的にありません。「不法就労」だったことを知らなかったときでも、在留カードの確認など基本的なチェックを怠った過失があれば罰則対象となります。知らなかったでは済まされません。

安全配慮義務

外国人労働者についても会社は労働契約法第5条による安全配慮義務を負っています。特に、日本語を十分に理解できない外国人に対しては、母国語による安全教育やマニュアルの整備はマストです。イラストを安全教育やマニュアルに活用するのも有効です。研修履歴の記録、作業中の理解度確認が求められます。研修履歴や理解度確認には実施年月日や内容とともに実施した言語や実施者名や受講者のサイン等を残します。通訳を利用したときは通訳者の記録も残します。

こうした配慮や記録が不十分のままでひとたび労働災害が発生すると、会社は安全配慮義務違反として損害賠償を問われる可能性が強まります。

生活支援義務

特定技能1号や技能実習生など一定の在留資格の者には、日本での住居確保、生活オリエンテーション、公的手続きへの同行、日本語学習や相談対応などの生活立ち上げ支援の実施が会社に義務付けられています。

特定技能1号の者の雇用には、出入国在留管理局に在留資格認定証明書交付申請または在留資格変更許可申請が必要です。このときに「特定技能外国人支援計画書」を提出し、この計画書の沿った支援を行います。

まとめ

外国人雇用は書類手続き、在留資格対応、生活支援、安全配慮の全てが重要です。短時間雇用でも届け出を怠らない、安全衛生教育のマルチ言語化、支援対応範囲の明確化、不法就労防止に特に注意し、トラブルの予防や働きやすい環境づくりが会社の生産性を高めます。

社会保険労務士丸山事務所は、「会社の発展とそこで働く社員の幸福の実現」を全力で応援します。