10月号 雇用契約書と労働条件通知書

2013年10月号(第53号)

採用面接時の労働条件と実際の条件が異なるときに労働トラブルが発生します。労働基準法では契約内容の書面での交付を義務付けています。今回は、雇用条件書面の交付方法、記載内容について考えてみます。

労働基準法の規定

雇用契約は口頭でも成立しますが、労働基準法では契約内容のうち重要な項目は書面での交付を義務付けています。①労働契約期間、②就業の場所及び従事すべき業務、③所定労働時間、時間外労働の有無、休日、④賃金の決定、計算及び支払の時期、方法、⑤解雇の事由を含む退職に関する事項が重要項目です。

労働基準法は、書面での交付だけを規定していますので、雇用契約書とするか労働条件通知書とするかは会社が決められます。

雇用契約書と労働条件通知書の違い

会社と応募者とが合意した雇用条件を契約書として書面化したものが雇用契約書です。双方が署名あるいは記名・押印して、双方がこれを所持します。これに対して、労働条件通知書は口頭で合意した雇用条件を会社が書面化して一方的に通知するものです。応募者の署名や記名・押印を必要としません。

労働条件を確認するだけの目的では、両者に大きな違いはありません。ただし、特約を付けるときには、合意したことが確認できる雇用契約書の方が適していると思われます。

トラブル防止のための記載事項

次のケースはよくトラブルになるので、明確にしておくことが重要です。

①雇用期間と試用期間の区別

例えば試用期間3ヶ月間と明示してあったとしても、不適正な社員を試用期間満了時に雇用期間満了による退職とすることはできません。それをするためには試用期間ではなく、雇用期間を3ヶ月間と明示しておきます。

②勤務地限定、職種限定

就業規則には、転勤や配転があると記載されていても、パート社員は、勤務地は変わらないもの、ドライバーは運転だけが仕事と思い勝ちです。会社の事情や本人の適性等によって転勤や配転があることを雇用契約書等に明示しておきます。

③作業服代その他の負担

社員に負担させる作業服などの費用は明示させなければならない項目ですが、書面化までは義務付けされていません。しかし、口頭で説明したとしても、支払い段階でトラブルになります。雇用契約書等に具体的に明示しておきます。

トラブル解決のための記載事項

トラブルが発生したときの解決手段を記載しておくことも重要です。トラブル解決は最終的には裁判所になります。訴えは、訴えられる者の住所地を管轄する裁判所にするのが原則です。その裁判所が近くであればよいのですが、社員が遠地に帰ったり移ったりすると裁判所も遠地になるので大変です。そこで、裁判所の専属的合意管轄の項目を雇用契約書等に入れておくことを勧めます。これがあれば、合意で指定した裁判所に訴えることができます。これは特約事項ですので、合意したことが明確となる雇用契約書の方が労働条件通知書よりも適していると言えるでしょう。

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