休憩時間の未取得

Q:配送担当の派遣社員より休憩時間が取れていないとの訴えがありました。本人は何も記録を残しておりません。周囲への聞き取りで未取得分は他の時間や外出先の休憩で取れていたはずで、その分と相殺されるという伝え方をしても良いでしょうか?

A:「相殺」の表現は不適切です。

労働基準法は、6時間を超える場合には45分以上の休憩を労働時間内に与えることを会社に求めています。残業時間であれば、割り増し手当は別として、他の日の不足分と相殺することも可能ですが、休憩時間では「相殺」の表現を使ってはいけません。

同様の観点から、休憩時間の不足分を賃金で支払うことも解決にはなりません。

「休憩時間が取れなかった」との訴えがあった場合でも、会社に休憩取得機会の提供があったかどうかが判断のポイントになります。
今後のことも踏まえ、本人へは次のような説明が考えられます。

訴えについて、記録がないため具体的な未取得日数を確認することができませんでした。
周囲の社員への聞き取りでは、休憩時間の確保について会社の配慮がなされており、実際には休憩を取れていたとの証言が多数ありました。
所長も、昼に休憩が取れない場合はコンビニ等での柔軟な休憩取得を認めています。
以上から、現時点では所定の休憩時間が取れていなかったと判断するには至らず、訴えに応じることはできません。
なお、今後は休憩の取得がどうしても困難なときは、その時点で会社に連絡を頂くとともに、状況の記録を残すようにしてください。ご協力をお願いいたします。

労働基準法では、休憩時間の一斉付与の原則」が今も残っています。一方で一斉付与義務の免除要件もあります。一つは労使協定、もう一つが業種によるものです。業種には、①運輸交通業、②商業、③金融・広告・映画演劇業、④保健衛生業、⑤ 接客娯楽業
が挙げられています。貴社が上記に該当すれば、一斉付与義務の免除対象になります。もし、該当の業種でなければ、労使協定を確認してください。

また、労働基準法では休憩時間をまとめて取ることを規定していません。もし、どうしても休憩時間の確保が難しいときは分割しての柔軟な休憩取得を勧めてください。

ただし、休憩時間は労働時間の途中に与えなければなりませんので労働時間終了後に休憩時間の不足分を残業時間とすることはできません。

(2025年11月)

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