9月号 監視カメラの導入

2015年9月(第76号)

防犯カメラの性能が向上した上に価格が下がったこともあり、監視カメラを設置する会社が増えています。その一方で、プライバシーを侵害するのではと懸念する声もあります。今回は、監視カメラを設置する際の留意点を取り上げます。

監視カメラ導入の目的

監視カメラを設置する目的は会社により種々ありますが、次の様な目的が挙げられます。

①不正行為の監視、②盗難、情報漏洩等の防犯、③サボりの監視、④在席、電話中、商談中等の勤務状態の確認、工場であれば、⑤不安全行為・行動の発見、習熟度の確認、⑥品質保証の一環、⑦介護施設や保育園等の人を預かっているところでは、介護や保育状況の確認や家族への配信。

監視カメラの導入時の問題点

監視カメラの映像は、録画することができたり、インタネット技術を使うことで、遠隔地へ映像を配信できたりと便利である一方で、一つ間違えるとプライバシーの侵害に繋がります。また、常時カメラに映されていることから社員が圧迫感を感じるという悪影響も生じます。これらの問題点を考慮して監視カメラを導入する必要があります。

裁判例

事務所内に監視カメラを設置され、プライバシーが侵害されたとして損害賠償を請求された裁判がありました。しかし,裁判所は,セキュリティー向上という設置の必要性がある上,カメラは事務所内全体を俯瞰するものであり設置場所についても合理性があること,原告の動静を観察することだけを目的としたものでないことから、プライバシー侵害に当たらないと判示しました。

監視カメラに関するガイドライン

監視カメラを導入自体は法律違反ではありませんが、当然に個人情報を扱うことになるので、導入には自ずと守るべき基準があります。

経済産業省は、監視カメラ等により社員の状態を監視する、いわゆるモニタリングに際してのガイドラインを制定しています。そこでは、①モニタリングの利用目的を特定し、従業者に明示する、②モニタリングの実施の責任者とその権限を定める、③モニタリング実施も社内規程を策定し、社員に周知すること、④モニタリングの実施状況について監査又は確認を行うことを求めています。

さらに厚生労働省では、モニタリングに際して、①個人情報保護に関する権利を侵害しないよう配慮すること、②常時のモニタリングは労働者の健康及び安全の確保又は業務上の財産の保全に必要な場合に限り認められること、③使用者は原則としてモニタリングの結果のみに基づいて労働者に対する評価又は雇用上の決定を行ってはならないことをガイドラインで示しています。

監視カメラ導入時の留意点

監視カメラの導入は、個人情報を収集することになるので、社員のプライバシーを侵害しないことが前提になります。そのためには、ガイドラインの繰り返しになりますが、まずは導入の目的、運用方法を明確にして、これを社員が納得するように丁寧に説明することが必須です。

社員が、不信感を抱いたままで導入しては、労働トラブルに発展し、生産性を下げることになりかねません。これでは何のために監視カメラを導入したのか分かりません。

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