2016年11月(第90号)
給与体系はシンプルの方が良いとの一方で、各種の手当で一人ひとりの社員の貢献に報いた方がよいとの考えもあります。今回は、給与体系の中での各種手当の性格と留意点を整理してみます。
給与体系を設計するねらい
給与体系は、①業務を効率的にする、②社員の生活を安定させる、③社員の生きがいやモチベーションを高く保つ等を目的として設計されます。この中で必要に応じて基本給とは別に、各種の手当が設けられることがあります。給与体系と人事評価方法によって、会社の社風が決められると言っても過言ではありません。
次に典型的な手当の性格と留意点を整理してみます。
役職手当
責務に報いるため、または責任意識を保つために設定します。メリハリを付けないで全員に支給しては効果が半減します。
資格手当
資格と事業との関係を整理し、その資格の評価を明確にしておくことが基本です。その資格がないと事業ができないものであれば、それなりの資格手当を支給することは当然です。事業と直接関係がない資格であっても、会社のレベルアップを図る目的で支給することはあり得ます。
固定残業手当
固定残業手当=ブラック企業と同視されることもありますが、それは間違いです。しかし、固定残業手当が、違法なサービス残業に繋がってはいけません。固定残業手当には生活の安定化を図るプラス効果があるので、想定残業時間を適切に設定して使うことは否定されません。
家族手当・住宅手当
どちらも仕事に関係しない手当です。社員の支出の多寡を調整する福利厚生費的な手当です。それなりに意義はありますが、社会・社員のライフスタイルが変わる中で、恩恵を受けない社員からの反発を生まない配慮が必要です。
無事故手当
運送会社やタクシー会社に良くある手当です。無事故で勤務した者に報いる手当として納得感はあります。しかし、あまり高額にすると、事故時のペナルティー感が強くなり、労務関係を悪化させることがあります。
歩合手当
インセンティブを高めるために良く使われる手当です。歩合割合を極端に高めると、①生活が安定しない、②競争意識を必要以上に煽る、③結果至上主義となり不正に繋がる等のマイナス面が強く出ます。
フルコミッションとして全額を歩合給とすること自体は違法ではありませんが、最低保証額の設定は必要です。成績が悪かったときに最低賃金を下回る支払いは違法となります。
まとめ
給与体系の中で各種手当を設定することは、社員に対して向けた社長からのメッセージと言えます。一つひとつの手当に意味があるものとしなければメッセージは社員に届きません。手当の性格や受給要件は就業規則等に記載し、受給要件を満たす社員には必ず支給することが必要です。就業規則等にない手当をその場の思いつきや気まぐれで支給することは、マイナス効果だけしかないので、絶対に行ってはいけません。